ARG(代替現実ゲーム)とは?国内の事例や動向、第四境界について語る

現実の世界とフィクションの世界、そのあいだを自由に行き来する体験。それがARG(代替現実ゲーム)です。

ARGは、映画や小説のように用意された物語の中に、プレイヤー自身が入り込み、謎を追っていく体験型のゲーム手法。SNSの投稿、公式サイトの隠しページ、メール、ポスター、街の看板など、あらゆる媒体をまたぎながら物語が展開していきます。

まるで現実の裏側にもうひとつの世界が隠れているような感覚を味わえるのが、ARGのいちばんの魅力です。

この記事では、ARGという言葉の意味から始まり、その歴史や国内の代表作、そして最近注目されている新しい活用法まで、オタク視点で楽しく紹介していきます!


第1章 ARG(代替現実ゲーム)とは

定義と基本的な仕組み

ARGは「Alternate Reality Game」の略で、直訳すると「代替現実ゲーム」となります。プレイヤーが仮想空間ではなく、現実世界の中で物語を体験することが特徴です。

プレイヤーは用意された情報を基に様々なプラットフォームを探索し、時には他の参加者と協力しながら真実を突き止めていきます。そのプロセスそのものが特殊なゲーム体験となる点が、ARGの魅力です。


AR(拡張現実)との違い

混同されやすいAR「Augmented Reality(拡張現実)」という言葉がありますが、こちらは現実の世界にデジタル情報を重ね合わせる技術のことを指します。

ARとARG、名前は似ていますが、その本質はまったく異なります。一言でいえば、ARは「技術」でARGは「体験」です。ARが「現実を拡張する技術」だとすれば、ARGは「現実を物語に変える手法」とも言えます。

どちらも現実とデジタルをつなぐ点で共通していますが、目的とアプローチは大きく異なります。


ARGを構成する3つの要素

1.複数メディアを横断する設計

任天堂スイッチやPS5など既存のハード媒体だけでなく、Webサイト、SNS、動画、書籍、チラシ、名刺、財布など、さまざまな媒体をつなげて物語が展開されます。メディアを横断して探索することが、プレイヤーの没入感を高めます。

2.参加者の行動が物語を動かす仕組み

謎解きや情報共有など、プレイヤーの行動が次の展開に影響する仕組みを持つことで、体験が一方通行になりません。参加者が能動的に参加することで、ARGの物語は進んでいきます。(ARG要素が強くなればなるほど、参加者が次のアクションを思考する必要がなる=次のアクションが何かわからないというジレンマがあります)

3.ラビットホール(入口)の存在

ARGには必ず現実世界から物語に入るための入口が用意されています。公式サイトの隠しページや、突然届くメール、意味深なポストなどがそれにあたります。ゲームのスタートはここですよ!と提示されるのではなく、気づいたらゲーム・物語・虚構の世界に落ちているというのがラビットホールの魅力です。


第2章 日本国内におけるARGの動向と第四境界について

大前提:ARGの歴史や動向に関しては国内では石川淳一さんが取りまとめている「ARGガイド2024/2025」が国内でもっとも分かりやすい情報源となります。

ここで語る歴史はARGの小学校2年生くらいまでの内容だと思って読んでいただき、より深い内容は「ARGガイド2024/2025」をぜひ購入してみてください!

日本におけるARGの歴史と動向

では、本題。日本でARGという概念が注目され始めたのは、2000年代半ばからです。

初期の頃は広告キャンペーンや映画のプロモーションにARG的手法を取り入れるケースが多く見られました。人気バンドのCDや、賞金がかかった謎解きゲームなどを通じて、プレイヤーを作品世界へ誘導するタイプです。

しかし近年、2020年以降では、検索型WEBサイト、SNSや動画配信プラットフォーム、LINEなどのメッセージアプリを活用し、より日常生活の中に物語が溶け込む常設型ARGが増えています。

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「プレイヤーが好きなときに参加できる」「SNSを通じて他のプレイヤーと協力できる」など、柔軟な参加スタイルが広がったことが、現在のARG人気を支える大きな要因になっていると考えます。

第四境界について

2020年代以降のARGを騙るにあたって、第四境界というクリエイター集団を抜きに語ることはできません。

「物語が日常を侵蝕する体験」が得られる良質なARGコンテンツを次々と発表しており、近年のARGブームは第四境界がつくったといっても過言ではありません。

どのARGもストーリー・謎解き・ギミック共に「WAO!」「は?」「ぞくっ」とする感情が動きまくるものが多く、初心者~玄人まで楽しめます。

ここでは代表的な作品をいくつか紹介します。

Project:;COLD(プロジェクトコールド)

2020年に始動した日本発の大型ARGプロジェクト。YouTube配信やTwitter、公式サイト、Discordなど複数のメディアやイベントを横断し、プレイヤーが事件の真相をリアルタイムで解き明かしていく物語構成が話題を呼びました。

SNS上では数万人のユーザーが考察や情報共有を行い、同時接続数が1万人を超えるなど大きな盛り上がりを見せました。この作品の成功は、ARGが日本のデジタル文化に深く適合できることを証明した代表例と言え、また、昨今ARG人気を作った伝説的作品と言えます。

「人の〇〇」シリーズ

人の財布、カレンダー、給与明細、交換ノートなどから始まるARGです。

実際に人の商品が手元に届いてからはじまるARG体験の楽しさ&不気味さから、多くのプレイヤーを生み出し、現在でも一部商品は品切れを繰り返しています。

謎解きと心理的没入のバランスが高く評価されており、日本におけるARGの新しい方向性を示しています。

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かがみの特殊少年更生施設

Web上で無料公開されている常設型ARG。「架空の更生施設」の公式サイトを装い、探索者がサイト内部を調べながら物語の真相を探るスタイルで人気を博しています。

サイト内検索を繰り返すことで真相がわかる、というシンプルながらも没入感のある設計が特徴です。ARG初心者でも参加しやすい導入例として評価が高い作品です。

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第3章 ARGの企画・運営のおさえどころ

ARGは、単なる「遊び」ではなく、企画力や設計力が問われる総合的なクリエイティブです。

物語、テクノロジー、ギミックを横断して構築されるため、制作時にはいくつかの要点を押さえる必要があります。

ARGの企画のおさえどころ

まず重要なのは、「誰に、どんな体験を与えるか」を明確にすることです。ARGはストーリーも重要ですが、体験設計が肝になります。参加者の行動をどのように導くか、どこで「気づき」を得させるか、その感情の流れを可視化することから始まります。

企画段階では「どの現実を切り取って、どう虚構化するか」を決めておくことが大切です。社会問題、企業、あるいは個人の心情。どんなテーマであっても、プレイヤーが自分事として関われるテーマでストーリーをつくり、それに沿った導線を設計するのが理想です。

また、ARG企画の際の課題として、現実との境界が曖昧であるため、倫理的・法的な配慮が不可欠となります。

ARGの運営のおさえどころ

運営のフェーズでは、複数のメディアをまたぐ進行を前提に、更新頻度やタイミングを慎重にコントロールします。ARGは、参加者の行動やSNSでの反応によって展開スピードが変化するため、想定以上の拡散や誤解を防ぐための「運営判断の基準」を事前に決めておくことが欠かせません。

さらに、ARGはコミュニティとの共創性が高いメディアです。参加者同士が考察を共有し、作品世界を補完していく構造そのものがコンテンツになります。そのため、運営者は全てを語らない姿勢を意識する必要があります。情報の欠落や曖昧さを恐れず、余白を残すことで、プレイヤーの想像力を促すことができます。

事例から見える成功要因と課題

国内ARGの成功例には、いくつかの共通点があります。

世界観と現実の接続が自然であること

「フィクションを感じさせない導線づくり」が重要です。現実のWeb検索やSNS投稿に物語の断片を溶け込ませることで、プレイヤーが自然に世界へ没入します。裏を返すと、いかにゲームだとフィクションだと感じさせずにゲームスタートさせるかが重要ということ。ARGで儲けるにあたって難しいところが、ARGを商品として販売した瞬間、それは商品であり、突然巻き込まれるラビットホール体験の質は低下してしまうというという点です。

コミュニティの存在

プレイヤー同士が考察や推理を共有する場があることで、体験が持続します。Project:;COLDではSNS上の考察文化やディスコードでのプレイヤーコミュニケーションが作品の人気を支えました。またXなどのオープンなコミュニティでの拡散も昨今のARG人気を支えています。しかし、これもARGが現実と虚構の境目を楽しむコンテンツだからこそ、コミュニティがクローズになりやすいという宿命を抱えています。

物語の進行テンポと難易度設計

難しすぎると離脱し、簡単すぎると飽きてしまう。適度な達成感を得られるペース配分が鍵です。余談ですけど、ARGには「ARGを好きな層」と「謎解きが好きな層」どちらのプレイヤーも参加することが多いのですが、物語によりすぎて謎解きの難易度が下がると謎解き層の不満につながり、物語が少なく謎解きだけになったりするとARG好き層から不満がくるという、ゲーム設計がなかなかに難しいジャンルだと感じます。

ARGや謎解きが得意な人はパーゲボコゼプ株式会社やってみてね。得意な人だけです。

初心者の人にはおすすめできないんですけど、これはARG玄人の人におすすめです!初心者の人はやらないほうがいいです。おすすめしません。だめです。ARGや謎解きに自信があるぞ!って人だけやってみてください。

第4章 ARGの今後の展望と可能性

テクノロジーの進化

近年、AI、AR、VR、メタバースといった技術の進化により、表現領域は急速に広がっています。従来のARGはWebサイトやSNSを中心とした情報探索型が主流でしたが、今後は空間体験やリアルタイム通信を融合させたシン没入型ARGが増えると予想されています。

たとえば、ARグラスを通して街を歩くと、現実の看板に物語の断片が浮かび上がるような仕組み。あるいは、AIキャラクターがプレイヤーに合わせてリアルタイムに会話を変化させる「個人化された物語体験」など。技術が進むほど、現実とフィクションの境界はさらに曖昧になり、世界そのものが物語の舞台となっていくでしょう。

啓発・リテラシー強化分野での活用

また、ARGは、単なる娯楽の枠を超えた「現実を再構築するアート」という側面もあると考えます。現実のニュース、社会問題、歴史的題材などを物語として再体験させることができるため、教育・啓発・研究といった領域にも応用可能です。

私個人としては、ARGは「信じる」という行為そのものをテーマ化するコンテンツです。

プレイヤーは、真実と虚構を行き来しながら、自分の認識や判断を問い直すことになります。これは、現代の情報社会において「何を信じるか」「どこまでを現実とみなすか」という根源的な問いを突きつける体験でもあります。

この特性を活かせば、ARGは今後、企業PRや教育、芸術、そして地域社会の物語化など、あらゆる領域で人の現実認識を動かす装置として活躍していくのではないかと、今後の展望にわくわくしています。

まとめ:現実を物語に変える、新しい体験のかたち

ARGは、現実の中に物語を溶け込ませることで、プレイヤーが自分の足で世界を探索していく体験型のコンテンツです。国内では第四境界をはじめとしたクリエイターによって文化が大きく広がり、常設型ARGなど多様な形が生まれています。

制作には設計力や運営判断が求められ、世界観づくり・導線設計・コミュニティ形成が成功の鍵になります!技術の進化とともに表現の幅はさらに広がり、ARGは今後も現実と物語をつなぐ新しい体験として発展していくこと間違いなし。

初心者のあなたも、私と同じくらいのARGオタクなあなたも、今国内できている空前のARGブームを一緒に楽しんでまいりましょう!